鼻とは

外から見て鼻とわかる部分の外鼻、鼻腔と呼ばれる鼻の内側の空間、さらに鼻腔の周囲にある空洞の副鼻腔で構成されています。
鼻には、外鼻孔より空気を取り込み、それを肺に送る呼吸器の役割と、臭いを嗅ぎ分ける嗅覚としての役割があります。
鼻腔を通る空気は、肺に入る前に加温や加湿、浄化がなされます。
一方の口呼吸は、外気を肺へダイレクトに取り込むので、喉に病原体(ウイルス、細菌 等)が付着して風邪などを引きやすくなるほか、唾液が減少し、殺菌力が低下するなどして、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
嗅覚は、食品の腐臭やガス漏れ、煙など命の危険を察知する重要な役割を担っており、私たちの安全を守る上で欠かせない感覚です。
また香りは食欲を増進させたり、アロマセラピーの香りで心身のリラックス効果を得たりといったこともできるなど日常生活を豊かにもさせます。
しかし、この嗅覚が何らかの原因によって十分に働かないとなれば、安全面でのリスクが高まるだけではなく、食事の楽しみが失われたり、精神的な安らぎが得にくくなったりと、私たちの身体や生活に様々な悪影響が及ぶことになります。
このように、何らかの原因によって、鼻呼吸や嗅覚に異常がある場合は遠慮なくご受診ください。
以下のような症状に心当たりがあれば、一度当院をご受診ください
- 鼻呼吸ができない
- 鼻水が出っぱなしである
- くしゃみが止まらない
- 鼻血が出ている
- 臭いを感じない
- 鼻の周りがかゆい、腫れがある
- 鼻の中が臭い
- いびきが大きくて注意された
- 鼻の中に入った異物が取れない
- 鼻を強打した など
鼻でみられる主な病気
鼻炎
鼻炎とは
鼻粘膜に炎症がみられる状態を総称して鼻炎といいます。
炎症がみられることで、鼻水・鼻づまり(鼻閉)、くしゃみなどの症状が現れます。
経過によって急性と慢性に分けられ、急性鼻炎の大半は、ウイルス感染による風邪症候群(かぜ)です。
多くは1~2週間程度で治癒することがほとんどです。
一方の慢性鼻炎は、炎症が慢性的に続いている状態です。
ウイルス、細菌、真菌など病原体に感染することで発症する感染性鼻炎、アレルギー反応によって引き起こされるアレルギー性鼻炎、特定の刺激によって引き起こされる刺激性鼻炎(激しい寒暖差、香水や化学物質、ストレス 等)などがあります。
治療について
急性鼻炎であれば、かぜが大半なので安静に努めるか、症状が強く出ている場合は、対症療法としてアセトアミノフェン、NSAIDs、抗ヒスタミン薬を使用します。
慢性鼻炎の場合は、抗ヒスタミン薬やステロイド系の鼻噴霧薬などを使用します。
アレルギー性鼻炎の場合は、アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)を除去する環境づくりを行います。
花粉症
花粉症とは
花粉がアレルゲンとなって引き起こされるアレルギー性鼻炎のことを花粉症といいます。
原因となる花粉は各々の患者さまによって異なり、スギやヒノキをはじめ、ケヤキ、ブタクサ、イネ、ヨモギなどでも発症することがあります。
そのため、春先に発症することもあれば、初夏や秋の時期にみられることもありますが、いずれにしても原因花粉の飛散時期限定となります。
主な症状は、くしゃみ、鼻水・鼻づまりといった鼻炎特有の症状のほか、アレルギー性結膜炎も併発しやすいので、目のかゆみ、目の充血、流涙、目やになども現れます。
そのほかにも、喉のかゆみ、痰が出ない咳、肌荒れなどの症状がみられることもあります。
問診や視診によって診断できることも多いですが、アレルゲンを調べるために血液検査をすることもあります。
治療について
原因花粉が判明している場合は、それを除去する環境づくりが大切です。
具体的には、外出時のマスクや眼鏡の使用、花粉が家に入り込まないように清掃するといったことです。
アレルギー症状を和らげる治療(対症療法)としては、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬、ステロイド系の噴霧薬等の薬剤を使用します。
アレルギー性結膜炎による眼症状については、抗ヒスタミンやステロイド系の点眼薬を使用します。
なおスギ花粉がアレルゲンの場合には、体質改善を目的としたアレルゲン免疫療法が可能です。
当院では同療法による舌下免疫療法も行っているので、希望される方はお気軽にお問い合わせください。
舌下免疫療法は→こちら
副鼻腔炎
副鼻腔炎とは
鼻腔の周囲にある4つの顔面骨の空洞(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)を総称して副鼻腔といいます。
これら副鼻腔の粘膜において炎症がみられ、膿が溜まっている状態を副鼻腔炎といいます。
多くは、風邪などによる上気道の感染がきっかけとなって、鼻粘膜の炎症が副鼻腔へ及ぶようになって発症することが多いです。
上記以外では、顔面骨でケガを負った場合や、潜水、飛行機の離発着時など急激な気圧の変化によって引き起こされることもあります。
副鼻腔炎には様々な種類があり、代表的な副鼻腔炎は次の通りです。
急性副鼻腔炎
急性的に発症する副鼻腔炎で、症状が1ヵ月以内に消失するのが急性副鼻腔炎です。
多くは風邪による上気道炎症をきっかけとして、副鼻腔に各種化膿菌の二次感染が起こり発症します。
主な症状は、膿の混じった悪臭を放つ鼻水、長引く咳、炎症を起こしている副鼻腔(上顎洞では頬の部分、前頭洞ではおでこの部分、篩骨洞は鼻根部、蝶形骨洞は頭等)でみられる痛みです。
症状が強い場合には抗菌薬治療が必要となります。
慢性副鼻腔炎
副鼻腔での炎症が持続している状態で、発症から3ヵ月以上経過している状態が慢性副鼻腔炎です。
多くは急性副鼻腔炎がきっかけです。
慢性副鼻腔炎は上顎洞に発症することが多く、膿が混じって悪臭のある鼻水、鼻づまり、炎症部位での痛み(上顎洞であれば頬の周囲 等)、頭痛、嗅覚の低下などがみられます。
この他、鼻ポリープが併発することもあります。
治療は、マクロライド少量長期投与を行います。
通常の抗菌薬の作用ではなく、主に抗炎症作用、免疫調節作用を目的として使用します。
保存療法で症状が改善しない場合は、手術療法(内視鏡下鼻・副鼻腔術)が検討されます。
好酸球性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎のひとつで、好酸球が発症に強く関与した難治性の副鼻腔炎です。
篩骨洞を中心に鼻茸が形成されやすく、嗅覚障害が強く現れるのが特徴です。
その他、鼻づまり、鼻水(粘り気があって膿が混じっている)、後鼻漏などの症状がみられます。
この他、中耳炎や気管支喘息を併発しやすいなどの特徴もあります。
治療法は、ステロイドの内服薬、点鼻薬が有効です。
保存的治療で症状が改善しない場合には、内視鏡下鼻・副鼻腔手術も検討されます。
再発することも多く、生物学的製剤のデュピルマブを使用することもあります。
鼻出血
鼻出血とは
血管や鼻粘膜が損傷を受けることで発症します。
特発性(物理的な刺激によって発症)、もしくは症候性(ある疾患がきっかけで発症)に分類され、その大半は特発性によるものです。
特発性は、鼻をほじる、鼻を複数回強くかむ、くしゃみの連発などによって発症します。
一方、症候性は、鼻腔に異物が入る、鼻部の外傷、鼻炎、鼻や副鼻腔の腫瘍、血液疾患(白血病、血友病
等)、高血圧や動脈硬化等による血管の脆弱化、抗凝固薬や抗血小板薬など薬物の影響を受けて発症します。
出血部位に関しては、大きく、前鼻出血、後鼻出血、上鼻出血に分けられます。その中でも出血の部位の大半は、キーセルバッハ部位とも呼ばれる前鼻出血です。
鼻出血の9割近くの方は、キーセルバッハ部位(鼻中隔前下部)からの出血です。
止血がしやすいのが特徴で、鼻翼圧迫によって止血されることがほとんどです。
後鼻出血の多くは蝶口蓋動脈からの出血で、鼻出血全体の10%程度といわれています。
この場合、止血することは容易ではなく、外科的治療(手術療法)が必要となることもあります。
最後の上鼻出血は、前篩骨動脈もしくは、後篩骨動脈から出血しているとされる鼻血ですが、まれなケースとされています。
止血困難な鼻出血もあり、10分以上経過しても止血が困難となれば、速やかに当院をご受診ください。
鼻中隔弯曲症
鼻中隔弯曲症とは
鼻腔を左右に隔てている壁のことを鼻中隔といいます。
鼻中隔がゆがみ、鼻づまりや鼻出血、鼻粘膜に炎症などの症状がみられている状態を鼻中隔弯曲症といいます。
鼻中隔は思春期の頃に大きく成長します。ただ、頭蓋骨など周囲の骨との成長過程にズレが生じやすく、それが原因で鼻中隔にゆがむと考えられます。
上記以外では、外傷や先天的に鼻中隔が弯曲していることもあります。
なお多くの方々の鼻中隔は、ある程度は曲がっているとされています。
鼻の症状が出ない限りは、鼻中隔弯曲症とは診断されません。
鼻詰まりが主な症状ですが、狭くなった側の鼻の穴は、鼻息によって刺激を受けやすく、炎症を起こしたり、鼻血が出やすくなることもあります。
鼻鏡や内視鏡を用いるなどして広さを確認し、必要であればCTによる検査を行うこともあります。
鼻中隔の曲がりが強く、強い鼻詰まり等によって、日常生活に支障をきたしている場合は手術療法が選択されます。
手術療法では、弯曲部の鼻中隔軟骨を取り除きます。
手術が検討されるのは、頭蓋骨などの発育が終わるとされる18歳以降となります。