首の病気とは

耳鼻咽喉科に関しては、耳や鼻、喉といった部位だけでなく、頭頸部についても、その範囲に含まれます。
したがって、首に関する違和感や痛み、病気といったことについても、当院にて対応することが可能です。
頸部に腫脹やしこりがある、首に痛みを感じるという場合も遠慮なくご受診ください。
以下のような症状に心当たりがあれば、一度当院をご受診ください
- 首に腫れがみられる
- 首に触れると痛みがある
- あごの下に腫れがある
- 首、もしくは首周囲にしこりを感じる など
首でみられる主な病気
唾液腺腫瘍
唾液腺腫瘍とは
唾液が作られる器官のことを唾液腺といいます。
唾液腺は、大唾液腺と小唾液腺に分けられ、大唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺が含まれます。
小唾液腺は、口の中いわゆる口腔内の粘膜に多数存在する小さな唾液腺のことをいいます。
これらに発生する良性および悪性の腫瘍のことを唾液腺腫瘍といいます。
なお同腫瘍の大半は、耳下腺(およそ8割)に発生し、次いで顎下腺(多くても全体の1割程度)、舌下腺や小唾液腺に発生することは稀といわれています。
なお悪性腫瘍になる確率に関しては、耳下腺が約2割、顎下腺が約4割、舌下腺と小唾液腺は8割程度となっています。
良性腫瘍は自覚症状が出にくく、耳、顎、頬の近くにしこり(腫瘤)は感じるものの痛みや神経症状が出ることがありません。
一方、悪性腫瘍では、しこりが急激に大きくなることがあります。
更に、痛みや神経症状(顔面神経麻痺 等)が現れたり、周囲の組織に腫瘍が癒着して動きが悪くなったりすることもあります。
種類について
唾液腺腫瘍はWHO分類によれば、良性腫瘍10種類以上、悪性腫瘍20種類以上が登録されています。
その中で最も頻度が高い(唾液腺腫の過半数以上を占める)のが、多形腺腫(良性)です。
これは中年や高齢世代の女性に発症しやすく、耳下腺で起きることが多いです。
症状としては、無痛性なものの、境界がはっきりした弾性硬の腫瘤を確認することができます。
同腫瘍は良性ではあるものの、悪性化することもあります。
また多形腺腫に次いで患者数が多いとされているのが、ワルチン腫瘍です。
高齢男性の喫煙者に発症しやすく、腫瘤は耳下腺にみられます。
痛みなどはなく、触ると弾力があるはっきりした腫瘤を確認できます。
検査について
主に超音波検査や頸部CT検査等の画像検査を行い、腫瘍の有無や大きさ、位置などを確認していきます。
また良性か悪性かを判断するため、腫瘍に向けて針を刺して細胞を抽出し、詳細を顕微鏡で調べる検査も行います。
治療について
手術療法(外科的治療)による摘出が基本となります。
摘出後は、再発予防のため、定期的に経過観察をする必要もあります。
唾液腺炎
唾液腺炎とは
唾液腺で炎症が起きている状態を総称して唾液腺炎といいます。
この場合、大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)で発症するようになります。
同疾患は、急性と慢性に分けられます。
急性唾液腺炎は細菌、もしくはウイルス感染によるもので、代表的な疾患としては、急性化膿性唾液腺炎や流行性耳下腺炎があります。
急性化膿性唾液腺炎は、高齢者に多く、唾液分泌の低下による細菌感染によって発症します。
どちらか片側の耳下腺部分で発赤や腫脹、疼痛などが主症状です。
流行性耳下腺炎は、一般的には「おたふくかぜ」と呼ばれるもので、原因はムンプスウイルスの感染です。
幼児や学童期の小児に発症しやすいという特徴があります。
片側もしくは両側の耳下腺や顎下腺に腫脹や疼痛がみられるほか、発熱や全身倦怠感も現れます。
一方の慢性唾液腺炎には、自己免疫によって発症するタイプがみられます。
代表的な疾患としては、シェーグレン症候群、IgG4 関連涙腺・唾液腺炎(ミクリッツ病)があります。
シェーグレン症候群は、自己免疫疾患のひとつで、涙や唾液の分泌が低下します。
これによって、ドライアイや口が渇くなどの症状が出現します。
その他、リンパ節の腫大による首の痛み、関節痛、虫歯が増えるということもあります。
ミクリッツ病は、IgG4 関連疾患のひとつで、自己免疫の関与も指摘されています。
涙腺や唾液腺(耳下腺、顎下腺)の腫脹、唾液量の低下によるドライマウスなどが主な症状です。
また慢性には、原因が特定できない反復性耳下腺炎というのもあります。
小児に発症しやすく、10歳以下のお子さまに起きやすいのが特徴です。
これは耳下腺に腫脹や疼痛が繰り返されるというもので、発熱や全身倦怠感などの症状がみられるようになります。
検査について
腫れている臓器が唾液腺であるかを調べるため、画像検査として、超音波検査、頭部CT、頭部MRIなどの検査を行います。
そのほか、血液検査や培養検査を実施することもあります。
治療について
細菌感染であれば抗菌薬を使用していきます。
また流行性耳下腺炎は、ウイルスなので特効薬なく、対症療法が中心となります。
自己免疫性による慢性の唾液腺炎も症状が唾液腺の腫脹のみであれば、対症療法が基本となります。
ミクリッツ病で治療が必要な場合は、ステロイド系薬剤を使用します。
甲状腺疾患
甲状腺疾患とは
首に痛みや腫れがみられる病気としては、甲状腺疾患の可能性も考えられます。
このような場合も耳鼻咽喉科をご受診ください。
甲状腺とは、前頸部に存在する蝶が羽を広げたような形をした臓器です。
内分泌器官のひとつであり、甲状腺ホルモンを分泌します。
同ホルモンは、全身の代謝を調整しており、身体にとって欠かせないホルモンです。
この甲状腺に何らかの病気がみられている状態が甲状腺疾患です。
甲状腺疾患の種類について
必要以上に甲状腺が分泌されてしまうこと(甲状腺機能亢進症:バセドウ病 等)もあれば、必要以上に分泌が低下してしまうこと(甲状腺機能低下症:橋本病 等)もあります。
これらの原因は、自己免疫の異常によって引き起こされることが多く、甲状腺に腫れや痛みがみられることがあります。
甲状腺機能亢進症であれば、発汗しやすい、動悸、脈拍が速い、暑がる、眼球突出(バセドウ病の場合)、疲れやすい等の症状がでます。
一方の甲状腺機能低下症であれば、寒がる、身体のむくみ、食欲不振、便秘、体重増加などがみられるようになります。
さらに甲状腺には腫瘍が発生することもあります。
良性腫瘍は、濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫、甲状腺嚢胞などが含まれます。
一般的に自覚症状は出にくいとされ、腫瘤が大きくなると、しこりや圧迫感が現れます。
このほかにも腫瘤(良性腫瘍)から甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると甲状腺機能亢進症の症状も現れるようになります。
悪性腫瘍とは、甲状腺がんや悪性リンパ腫のことをいいます。
甲状腺がんは、初期は無症状ですが、大きくなると首にしこりを感じるほか、人によっては痛みを伴うこともあります。
進行すれば、声がれ(嗄声)、飲み込みにくいという症状が出るようになります。
また、悪性リンパ腫では、首などのリンパ節に腫脹がみられ(痛みがあることは少ない)、発熱、寝汗、体重減少なども現れるようになります。
検査について
甲状腺超音波検査でしこりの有無やリンパ節の腫れなどを調べます。
良悪性に関しては、腫瘤に向けて針を刺し、細胞を採取して、顕微鏡で詳細を調べることで診断します。
治療について
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)であれば、抗甲状腺薬を用いて分泌過剰な状態を抑制します。
抗甲状腺薬では改善が困難という場合は、アイソトープ治療(放射性ヨウ素)が選択されます。
薬物療法で改善が困難であれば、甲状腺の一部、もしくは全てを摘出する手術療法が選択されます。
また甲状腺機能低下症の場合は、不足している甲状腺ホルモンを内服する薬物療法となります。
甲状腺がんに対しては、手術が治療の中心となります。
悪性リンパ腫は、タイプによって治療内容は異なります。